(コンコン)
メメちゃん、いる?
はいはい、いますよ。
角田さん、どうしました?
そんなに暗い顔をして。
実はさ、最近大ちゃんの元気がないみたいなんだ。
……たしかにそうですね。
最近はご飯も全然食べませんし。
カガちゃんは寿命じゃないかって言ってた。
あー、その通りですよ。
大ちゃんはもう寿命です。
正直、あと数日もてば良いほうでしょう。
え、メメちゃんわかるの?
だてに死神を目指してませんよ。
でさ、せっかく僕たちも慣れてきたところで悲しいよ。
カガちゃんもすごく悲しむだろうし。
ねぇメメちゃん、なんとかできないかな?
お気持ちは分かりますが、寿命を伸ばすことはおすすめしませんね。
そもそも寿命は肉体の限界であって、それを解決するためには肉体の総入れ替えが必要になります。
スワンプマンやテセウスの船みたいなものですよ。
結局、それで違和感を感じて一番傷つくのは身近なカガちゃんや大ちゃん自身でしょう。
それで魂が定着するかも相当なギャンブルになりますし。
…………。
それに、私たちのエゴだけで長生きさせても大ちゃん自身の気持ちもありますよ。
寿命をまっとうできることはそれだけ素晴らしいことなんです。
私たちと一緒に住みたい、暮らしたいとは比べ物にならないくらい大枠の、もっともっと根源的な部分に寄らなければ、大ちゃん自身も苦しむことになるでしょう。
……そうだよね。
ちょっと一回考えてみる……。
それがいいと思いますよ。
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(コンコン)
カガちゃん、いる?
あ、角田さん。
カガちゃん、なにしてるの?
大ちゃんのご飯を食べやすくしてるんです。
もっと食べて元気になってもらわなきゃいけませんからね。
あのさ、カガちゃん……。
大ちゃん、昨日から無理して元気なように振舞うんです。
本当は体のどこかが痛いはずなのに、私の前では我慢しているんです。
……せめて、最期まで元気でいられるようにしたいんです。
我慢して無理をする大ちゃんじゃなく、自然な大ちゃんのままで。
……………。
あ、角田さん。
メメちゃん先輩は何かいい案はありそうでしたか?
い、いや。
まだメメちゃんに相談できてないんだよね。
今から聞いてくるよ。
ありがとうございます。
苦痛さえとることができれば、私はそれ以上は望みません。
分かった。
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…………。
以上。