夏を楽しまないの?

 

 

 

…………。

 

 

あれ、どうしたのユキちゃん。

ほら、こっち涼しいからおいで。

 

 

…………。

 

……??

どうしたの、じっとこっち見て。

 

 

 

……(かりかり)

 

 

【角田は本当に夏が好きなの?】

 

 

……!!!

 

 

……(かりかり)

 

 

【いつも家の中にいる】

 

 

 

あー……さんざん「夏が好き」って言っておいて、いざ夏になったら全然堪能してないじゃん、ってそういうことだよね。

 

 

……(こくん)

 

 

そうだね……。

 

 

正直、ユキちゃんに言われるまで今が夏ってことを忘れてたよ。

「なんか暑い日」くらいの認識でさ。

 

 

僕が好きなのは「夏」って言われて想像するような、爽やかな景色だったり雰囲気なんだよ。

でもそれって日常で感じることは難しいじゃない?

 

外に出たら滝みたいに汗が出てベタベタするし、そもそも暑さでそれどころじゃない。

 

だからこそ、僕はタイミングを見極めてるんだよ。

 

 

……(かりかり)

 

 

【何言ってんの?】

 

 

ありゃ、ユキちゃんにごまかしは通用しないか。

 

 

いやー、でも夏の雰囲気が好きなのは本当で、それを感じるための行動が面倒なんだよ。

 

 

…………。

 

 

 

 

……いや、待てよ。

 

 

 

ユキちゃん、僕なんだかんだ夏を満喫してるよ。

 

いっつも散歩に行って青々とした景色を楽しんでるし、カガちゃんと水を張ったタライに足をつけるやつもやったし。

廊下の床に張り付いて涼んでるユキちゃんも見られたし。

 

 

 

……!!!

 

 

 

……そんなことしてないもん。

 

 

あれ、実家の猫の姿だったかも。

 

 

以上。