皆さんご機嫌よう。アマちゃんです。
どうも、アマちゃんの表情のレパートリーが少ないことがばれてしまうのであまり色々な表情をしてほしくない角田です。
今日は私が最近読んだ本の紹介をします。
お、珍しい。アマちゃんも本を読むんだね。
「めっきらもっきらどおんどん」かな? それとも「はらぺこあおむし」?
絵本じゃないですよ! 小説です!
絵本は絵本で今読むと結構味わい深いけどね。
まぁ、それはさておき、なんてタイトルの本?
もしかしたら読んだことあるかも。
はい、今日はこちら、『人間に向いてない』を読みました!
…………。
……。
アマちゃん。なにか悩みでもあるの?
相談に乗るよ?
身近に改造手術をしてくる狂人がいるのでブッ〇してほしいです。
アマちゃんだんだんと言葉に遠慮がなくなってきたね。
で、これはどういう内容の小説?
タイトルからして明らかに暗そうな本だけど。
あれかな。主人公が色々と悩む系のやつかな。
はい、その通りです。以下、あらすじを載せますね。
とある若者の間で流行する奇病、異形性変異症候群にかかり、一夜にしておぞましい芋虫に変貌した息子優一。それは母美晴の、悩める日々の始まりでもあった。夫の無理解。失われる正気。理解不能な子に向ける、その眼差しの中の盲目。一体この病の正体は。嫌悪感の中に感動を描いてみせた希代のメフィスト賞受賞作。
簡単に言ってしまえば「息子が突然虫になってしまって困惑する母親の物語」です。
へぇ……なんだかフランツ・カフカの『変身』を彷彿とさせるね。
そうですねー。ある日突然異形になってしまうところとか、それを見た家族がびっくりしたり、異形を人前に出さないよう努力したりする様は似通ったものがあります。でも、はっきりと違う点は、主人公が異形になった息子の「母親」ってところです。
でもさ。結局異形になった人を隠しながら生活する様をちょっとリアルに描いてるだけなら誰の視点でも内容はそんなに違わないんじゃない?
いえ、それが全然違うんですよ。
小説内でこの変身は「異形性変異症候群」という病名がついています。
……ということは、つまり?
……変身を遂げたのは主人公の息子だけじゃない?
正解です! この病気はニートの人、それも若年層を中心に複数確認されている奇病、ということになっています。連日ニュースでも報じられ、少子化の現代では政府も頭を抱えている状態なのです!
めちゃくちゃ嬉しそうに言ってるけど、それって結構とんでもないことだからね?
で、複数いたらなに?
角田さん。自分じゃどうにもならないことってこの世にたくさんあるじゃないですか。解決策のない問題にぶつかったときとか。そういうときって同じような経験をした、もしくは今経験してる人に相談したくありません?
……まさか。
そう、このお母さんは、親族が異形性変異症候群にかかった人の集まりに出席しようと決意し、変わり果てた息子に関して情報を集めようと奮闘します。
なんか、今その病気が流行り始めたら本当にそういうことになりそうだね。
『変身』と比べてリアルさの時代が違うっていうか……。
本当にその通りです。なんだかんだ集会の人と仲良くなったり、その中で派閥があったりと、普通の「保護者の集い」みたいになっていく感覚がすごく奇妙なんですよ。
で、ここまでで分かるかと思うんですが、この小説の中で息子――異形の絶対的な味方がいるんですね。
それが主人公の母親。見た目に嫌悪感を抱きながらも、自分がお腹を痛めて生んだ息子に変わりはなく、彼がケガをしようものなら必死で病院を探す程なのです。
へー。変わった形だけど、「家族愛」みたいな感じのテーマなんだ。
じゃあ、これまで出てきてない父親も同じように必死になってるの?
それがそうでもなくてですね……。
あらすじで「夫の無関心」とあるように、父親は元々仕事人間で家庭の出来事にあまり興味がなかったようで、引きこもりの息子が虫になってからは「早く捨ててこい」といったようなことを妻に言い続けます。
あぁ……なるほど。
このお母さんは社会だけじゃなくて、夫からも息子を守らなきゃいけないんだね。
そうなんです。
まぁ、この異形性変異症候群と診断されたら正式に人間としては死んだことになるので特別ひどいというわけではないみたいですが、冷たいですよね。
あ、そういえば息子ってどんな姿なの?
芋虫って言ってたけど。
はい、しっかりと芋虫です。
複眼のある大きな頭、アリのような顎、芋虫のような胴体、ムカデのようにびっしりとある多足は人間の指なのです。
……早く捨ててきなさい。
こんな姿だからこそ、母親の守ろうとする姿勢がより輝いて見えるんですよ。
で、この本を読んだ感じはどう?
素晴らしい読後感です! なんだかスッキリしちゃいました。
えぇ……。
今までの説明からは想像できない感想だね。
息子が親に抱く想い、母親が息子に望む期待の交錯やそれに伴って生まれる憎悪、愛情などの複雑な感情がそれぞれの立場で描かれているので妙な納得感があるんですよね。
それらを追いかけた末の感動は格別です。
これから親になる方、特に母親になる方にはぜひ読んでいただきたい一冊です。
よく言うパーフェクトチャイルド願望なんてものがありますが、
それは所詮親の期待感、言ってしまえば「ガチャガチャを引く前の皮算用」のようなものに過ぎないので、それを押し付けられた子供が何を思うか、また、それを押し付けている自分は子供を一人の人間として扱っているのかという疑問を抱かせてくれます。
なので、角田さんもこれを読んで、私への扱いを見直してください。
子供をコントロールするってことがいかに残酷か、知ってくださいね!
…………。
……。
アマちゃんは僕の子供じゃありません。
ペットです。
以上。