地獄の六丁目:やったことないドラムを学年全員の前で演奏した話

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今回も長いので目次を出しておきます↓

 

 

はじめに

回数を重ねてくるごとに地獄感が薄れていくことで有名な地獄巡りももう六丁目ですね。

今回は少し趣向を変えて、共感性羞恥なんかで皆さんにもハラハラしていただきたいと思います。

 

では早速始めます。

 

 

事の発端

僕の通っていた中学校には「選択授業」という科目がありました。

中学校2年、3年生が対象で、「音楽」「技術」「美術」の三教科から一つを選ぶというものです。

普通、授業ってその時間ごとにすることが決まっているじゃないですか。

例えば音楽の授業だったら、ある日はアルトリコーダーの練習、ある日は合唱、ある日は音楽鑑賞とか。

そういう通常の科目とは別の時間に「選択授業」という科目があったんです。

この選択授業では半年かけて一つの作品を作ることが目的とされていました。

美術だったら一つの絵を描くこと、技術だったら一体のロボットの作成、音楽だったらコンクールに向けて合唱曲をひたすら練習とかですね。

かける時間が多いだけに、通常の授業で出来上がるものよりクオリティが高いんですよね。しかも自分で好きな教科、得意な教科を選んでいるわけですから、それぞれの生徒が熱を持って取り組むことができます。

中学3年生はちょうど受験シーズンであることも相まって、気分をリフレッシュさせるには非常に有効だったのではないかと思っています。

 

さて、僕は当時中学3年生。それも後期のことです。

中学最後の選択授業において、僕は「音楽」を選択しました。

2年生で選択した科目とは別のものを選ばなくてはならない、という制約があったので、僕は最後のこのときのために「音楽」の科目をとっておいたのです。

当時は吹奏楽部にも所属していて、同時にピアノを経験していたこともあったのでこの三教科の中なら自分は「音楽」が得意だと思っていました。

 

さて、その音楽では何をしたのかといいますと、「バンドを組んで演奏をしよう」というものでした。

 

そして音楽の先生考案の「卒業直前にある送別会(?)で演奏する」という目的のもと、練習することになったのです。

これは3年生だけで行われるので「送別会」というのは少し違う気がしますが、「学年全員が集まる」「有志で出し物を募ってみんなで楽しむ」というものだとイメージしてもらえれば大丈夫です。

つまり僕たちはこの有志のバンドとして演奏することになったんですね。

 

音楽を選択した人数はそんなにおらず、ちょうどバンドが二つ構成できる程度でした。

一つのバンドは全員ギターやドラムの経験が豊富でなんなら既にバンドを組んで活動しているようなメンバーで構成されました。精鋭たちですね。

そしてもう一つ、僕たちのバンドは「まぁ、そこまでの実力ではないけどギターやベースを持っていて、それなりに演奏できなくはない」というメンバーが集まりました。

いわずもがな、今回は僕のバンドの話が中心になります。

中には楽器にまったく触ったこともない子もいましたが、ひとまずボーカルということで落ち着きました。

僕は吹奏楽でフルートをやっていたのですが、バンドにはさすがに合わないだろうというということで仕方なくキーボードをするつもりでいました。

 

しかし、ここで問題が発生します。

 

ドラムがいない。

 

メンバーの内訳はというと、ギター2、ベース1、ボーカル2、キーボード1です。

ドラム、いませんね。

 

 

じゃあボーカルのどちらかは? というと、この二人は楽器経験が皆無だったのです。

送別会まで残り半年。一曲二曲なら練習次第ではなんとかなると思いますが、やっぱり経験ゼロから始めるのは不安なのでしょう、この二人は頑なにドラムを拒みました。

 

ギターの中から一人は? と思ったのですが、こちらは自前のギターを持ってきており、ギターを弾く気満々。人前で披露する機会なんてそうそうありませんから、自分の得意なもので挑みたいですよね。

 

さあどうしようとなった時、リズム感の有無で吹奏楽部のメンバーに注目が集まりました。要は僕とベースの友達です。

しかし、穴を埋めるためにベースを抜いてしまっては意味がありません。

僕たちの頭の中で必須なのがギター、ベース、ドラムの三つだったのです。

 

そして僕はというと、この記事でも書いた通り↓自分のピアノの腕に自信があるわけではありませんでした。

 

rightuncle.hatenablog.com

じゃあ僕が頑張ればよくない? ということで 僕がドラムを演奏することになったのです。

 

 

決まった曲と大変な練習

そして、曲も同時に決定しました。

アニメ「けいおん!」のエンディング曲「Don't say ”lazy”」です。

少し音量が大きめなので気を付けてね。

いや、テンポ早いよ……。 

 

しかし、ドラムを頑張ると言ってしまったからには「いや、もっと優しいのにしてよ……」とは言えませんでした。

まぁ、難易度なんて僕にわかりっこないので全ての楽曲が難しそうに聞こえたわけなんですが……。

 

 

そして、練習が始まりました。

楽器は音楽室にあったドラムを使っていたのでそこは問題なかったのですが、問題はそれを教えてくれる人がいないということです。

もう一つのバンドにいるドラムがめちゃくちゃ上手い友人にちょっとしたことを尋ねるくらいはできたのですが、あっちの練習をいちいち止めて基礎的なことを教えてもらうのも憚られました。そもそも教室も分かれて練習していたのでつきっきりで教わることはできませんでした。

音楽の先生は指導をするわけではなくこのバンドに関しては見て回る程度でした。

 

 

なので、僕は「とにかく楽譜通りに叩けること」を目標に、楽譜にかじり付いて練習しました。

とはいえ基本といわれる8ビートすら知らないものですから、バスドラム(右足で打つやつ)の動きに翻弄されることになります。

ただでさえピアノのペダルを踏むのが下手だったのに、それでリズムを取るなんて……と四苦八苦しながら練習の日々を過ごしました。

 

 

 

あと一つ、当たり前なんですがドラムが一定のテンポを保つことってめちゃくちゃ重要ですよね。バンド全体のテンポを管理していると言っても過言ではないでしょうか。

なので、メトロノームが電池切れになるまで使って練習した覚えがあります。

 

これもまた大変なんですよね。

回数重ねてある程度慣れてくると今度は走る(テンポがどんどん早くなっていくこと)ことに悩まされるんですよ。

なまじ普段からテンポが、リズムが、と言われ続けていた吹奏楽部員ですから、こういうことはめちゃめちゃ気になります。

というわけで、この点についてもかなり練習したのです。

 

 

あ、イメージしやすいように「Don't say "lazy"」の叩いてみた動画を一つ貼っておきます。↓


けいおん!K-ON!ED Don't say "lazy" 叩いてみた

こういう感じ。

この方はドラムに慣れている感じがしますが、僕はもっと必死な感じで叩いてようやく聞けるくらいです。

 

 

 

迎えた当日

そして当日。

全体の完成度としては「中学生らしさが溢れている」とだけ言っておきましょうか。

まぁ、僕たち(僕単品かも)にしてはよくやったな、って感じです。

ちなみに、僕たちはもう一つのバンドの前座です。まぁ、当たり前ですよね。

この時僕たちのバンド名は「チーム5軍」でした。

もう一つのバンドが1軍だとして、僕たちが果たして2軍というポジションになりうるのか、という考えから付いた名前です。5軍くらいがちょうどいいよねっていうことね。……バンドやってるとは思えないくらい消極的な名前ですね。

まぁ、割と仲間内のノリで決めたので付けた当時はみんなで爆笑しましたが。

 

で、ステージに上がりました。

目の前にいるのは100人を超える学年のみんな。

「え、僕ここで叩くの?」という当然の疑問を抱きますが、もう後戻りできません。

 

この演奏の結果としては大した失敗もなく「まぁまぁ良いじゃん」くらいの出来で、直前で不安になった僕もこの出来には満足していました。

手首が硬くはなっていたけど変に走るわけでもなく、ちゃんと周りを見て演奏できたと思えます。

そして、僕たちはお礼を言い、客席に戻りました。

 

で、真打登場。

もうなんの曲かは忘れてしまったのですが、もう一つのバンドはやはり僕たちとは比べものにならないくらい上手でした。

まぁ、そんなことはわかりきっていたので別段落ち込むこともありませんでしたが。

ただ、本当の地獄の六丁目はここからだったのです……。

 

 

 

 

 

 

 

打ち砕かれた尊厳

もう一つのバンドの演奏が終わり、マイクが渡されます。

挨拶をして終わるかと思いきや、バンドの皆は楽器を下す素振りを見せません。

 

マイクを持ったドラムの彼は言いました。

 

 

 

「では、もう一曲聞いてください。「Don't say "lazy"」

 

 

おい!

それ僕たちが演奏した曲!

 

と思いましたが、教室を分かれて練習していた上に、送別会のプログラムには「バンド演奏」と書かれているだけで曲名は書かれていなかったので、偶然被ったのでしょう。

実際彼らはめっちゃいいやつなんで、悪意は一切なかったと思ってます。

 

そして、目の前で始まる超上手い「Don't say "lazy"」……。

超盛り上がる会場……。

僕たちのバンドメンバーは顔を見合わせて苦笑いをすることしかできません。

彼らと比べられて云々、みたいなことは一切ありませんでしたが、尊厳というか努力の成果が砕け散る音が頭の中に響いていました。

まぁ、そもそもこれだけの実力差があって、それでたった半年で追いつこうなんて虫のいい話なので、落ち込むことすらおこがましい感じもしますが。

 

 

 

……というわけで、僕のドラムデビューはこうして幕を閉じました。

あの演奏聞いているとき本当につらかったなぁ……。

 

これは、「本気で頑張ってきた人って強いよね」って話です。

 

僕のようになりたくなければ、もっと本気で継続しましょう。

 

以上。