一枚の扉があった。
僕がずっと開けたかった、変化の扉だった。
いや、僕は本当は開けたくなかったのかもしれない。
両手いっぱいに抱えたものがなくなるような気がして、僕はノブに触れていつでも開けられるように準備していた。
昨日、僕の手から一つのものが落ちた。
一番大切にしようと決めていたもの。
これと一緒にもっと奥の扉をくぐることを夢見ていたもの。
夢を見ていただけ。
僕は扉を開けなかった。
それが落ち、粉々になったとき、僕は全てのものを落とした。
僕は、茫然としながら、ひとりでに開いた扉と向き合っていた。
僕にはこの扉をくぐる勇気はない。