はぁ……もうへとへとだよ……。
お、角田さん。
おかえりなさい。
どうでした？ 旅行は。
良かったよ。
海辺の温泉で景色良かったし、料理も超豪華だったし。
生きてるアワビを踊り蒸しにして食べたのなんて、もう絶品だったね。
良かったですね。
もちろん、買ってきてるんですよね？
アワビはさすがにおみやげでは買えないよ……。
でも、本当に疲れた……。
結構いいホテルだったからよく寝たし、朝風呂なんか入ったりして、リラックスしてたつもりだったけど、帰りなんかもう爆睡だったもん。
で、今も眠いよ。
まぁ、なんだかんだ、屋敷が一番ですね。
そう。
退屈で外に出たい気持ちもちょっとあったけど、これで憂いなく引きこもれるよ。
お、いいですね！！
角田さんのお土産を肴に籠りましょう！！
メメちゃんにはこれ。
にんにく味噌と、ラスクだよ。
お、対極なものですね。
まるで陰と陽です。
ありがとうございます。
疲れすぎてて、自分のお土産わすれちゃった……。
以上。
ねぇホノちゃん。
なによ。
最近買った本を見てほしくてさ。
いいわよ。
何買ったの？
これ、「サイレンと犀」
なにこれ。
詩集？
うーん、短歌集なのかな。
へぇ、珍しいわね。
短歌？
とはいっても、横文字もたくさん出てくるし、韻律もそんなに気にしなくても読めるんだ。
Twitter見てたらオススメしてる人がいてね。
一ページだけ見て、即買ったよ。
へぇ、何が良かったの。
短歌なだけあって、短い字数の中にすごく深かったり広い世界が見えるんだよね。
まぁ、短歌とか俳句はそうだと思うんだけど。
この作者の句はね……ユニークでノスタルジックなのがすごく良いよ。
風景の切り取り方が絵画的なんだけど、ちょうどよく幼少期の記憶を……それも、身に覚えのない記憶を呼び覚ましてくれるよ。
な、なんだか難しいわね。
短歌集って結構するなぁ、って思ったけど、何回も繰り返し読んでるよ。
ボサノバを聞いて南国っぽい気分になるのと同じで、これを見て爽やかな、懐かしい気分になる！！
オススメです！！
以上。
ゆーちゃん。
……（くんくん）
……あ、新しいお香買ったんだよね。
香る？？
……（すたすた）
あれ、離れてどうしたの。
……（かりかり）
【くさい】
えっ、そんなことないよ。
白檀だよ。
お線香みたいな感じがしてリラックスできるじゃん。
…………。
【くさい】
えー……。
あれ、角田さんとユキちゃん。
どうしたんですか――
あっ！！！
え、カガちゃん？
か、角田さん！！
なんだか鼻が……！！
か、カガちゃんまで……。
……くさいよね。
く、臭いというか、刺激が……。
えー……。
お香、ダメだったかなあ。
わ、私たちには少し刺激が強いかもしれないです……。
ホノちゃんには好評だったんだけど……。
以上。
