はぁ……疲れました。
アマちゃん、どうしたの。
こんな時間に外出なんて。
いえ、別に出かけてたわけじゃありませんよ。
家の前にいた人を追い払ってただけです。
人?
なにがあったの?
さっきリビングにいたとき、外から視線を感じたのでそちらを見ると、カップルがこの屋敷を覗いてたんですよ。
なにかあったのかと思って外に出て、話を伺ってきました。
ほう。
ますます意味が分からないね。
で、なんて言ってた?
なんでも、巷でこの屋敷は心霊スポットとして扱われているようです。
はぁ? なんでまた。
聞く話「敷地内を血まみれの女性がうろついている」とか、「夜に奇妙な物音が聞こえる」とかいろんな噂があるみたいでしたよ。
後者は僕たちが生活してるからだろうけど……。
そこから尾ひれがついて広まってるんだね。
……まぁ、心霊スポットというか化物屋敷なら本当なんだけどね。
これから遊び半分で来られても迷惑ですよ。
私たちにだってプライバシーはありますから。
変な人が寄ってきたらカガちゃんも危険だしなぁ……。
早急に手を打つ必要がありそうだね。
一体どうすればいいんでしょうか……。
仮に「この屋敷は心霊スポットじゃない」って話を流すとしても、「あの屋敷は心霊スポットだ」って認識に打ち勝つか、ちゃんと広まってくれるかは分からないし。
逆に考えよう。
もういっそのことここを最凶の心霊スポットってことにすればいいんじゃないかな。
はぁ!?
そうなったら困るって話をしてるんですけど!!
いやいや、よく考えてよ。
肝試しをするとして、本当に事故が起こるような危険なところにはいかないでしょ?
要はみんな、安全だとわかりつつもスリルを味わいに来てるんだから。
そこを恐怖のどん底に叩き落すスポットになれば人は減るんじゃない?
多分、こうなった以上訪れる人を0にすることは無理だよ。
あー、なるほど。
もうそうするしかないんですかね。
でも、一体どうやるんですか?
私、人を傷つける感じの策は嫌ですよ。
そこはメメちゃんとカガちゃんに協力してもらいます。
……本当に大丈夫なんですか?
任しといて。
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というわけで、しばらくの間敷地の出入り口付近にカガちゃんの友達、アナコンダの大ちゃんに住んでもらうことになりました。
私も大ちゃんと生活できるなんて夢のようです!!
大ちゃんも喜んでいます!!
……念のためもう一回確認するけど、大ちゃんは人を襲わないんだよね?
はい、ご安心ください。
そこは念入りに教えていますから。
人懐っこい子なので多少じゃれてくることはあるかもしれませんが……。
こんな大きな蛇さんにじゃれて来られたら私は一発KOなんですけど……。
まぁ、それくらいなら最悪OK。僕が許す。
とりあえず、敷地に入ってくる人が驚けばそれでいいよ。
「あの屋敷、アナコンダを飼っています」って通報されたときは逃げられるように脱出経路も確保してあげてね。
それもバッチリです。
で、私はどうすればいいんですか?
メメちゃんは大ちゃんを突破してきた人に対応して。
大ちゃんを潜り抜けるくらいだから脅かすだけじゃダメだね。
具体的には幻覚で恐怖させたり、明確に死を意識するような体験をさせてあげて。
……あ、傷つけちゃだめだよ。
難しいですね。
ちょっとくらいはいいんじゃないですか?
ダメ。
1追い払い毎にバイト代あげるから、頑張って。
それなら話は別です。
皆さんを恐怖のどん底に叩き落してあげますよ!!
こちらもえらく不安ですね……。
まぁ、ひとまずこれで大丈夫でしょう。
近いうちにまた今日のカップルみたいな人が来ると思うから、それを追い返してね。
分かりました!!
りょ! です!!
――この時の僕は、その後本当に「最凶最悪の心霊スポット」として取り上げられるなんて思ってもみませんでした――
以上。