私の住む国は王政である。
一人の人物を皆の代表として立て、多様な意見をまとめ上げる役を担う。
国民が少ないため、全ての者を集めて意見を交換することができる。
その点においては直接民主制のように見えるなど、多少の矛盾が見えるが、その制度を見直す動きはなかった。
国土は一つだ。
おかしな表現かもしれないが、仕方がない。
全ての国民、また王は同じ国土にて生活を送っている。
海も山も木も土すらもない国。
それなのにも関わらず、皆不自由なく過ごすことができている。
国の最も重要な問題は外交にあった。
日があたらず、特に生産性もないその国を、他国は不気味に思って深い仲になろうと考えなかった。
もっとも、外交で得られる利益などたかが知れている、と国王は考えていたが、他国の侵略平気の的となることを恐れていた。
親密になることでようやくゼロとなる、なんとも馬鹿げたものだ。
この国には王に逆らう者はいないが、守ろうとする者もいない。
全ての問題が王自体にあるとは思っていないし、そもそも王を失うことには何の意味も持っていないと理解していた。
感情的なことを口に出したところで王は動かない。
国民はそれぞれ一貫した考えを持っている。
こだわりともいえる「それ」に異常な執着を見せる。
しかし、やはり「それ」に相反する政策の決定が下ることもある。
その時、国民は暴れたり、頑として「それ」を押し付けたりはしない。
国の決定において、「それ」は逆らう力を持っていないのである。
これらは元々、全て一つのものだった。
いつしか、好奇心などによって分化し、矛盾を一つの袋でまとめたような歪んだ国となってしまった。
誰も、国王の苦悩を知ることはできない。
それどころかこの国の存在すら掴むことができないかもしれない。