地獄の種類は色々ありますが、痛み系の地獄の中ではあれを超えるものは未だ体験したことがありません、どうも角田です。
痛い系の話はちょっぴり苦手です、アマちゃんです。
これは僕が中学生のときの話です。
当時吹奏楽部だった僕はいつものように朝練に行き、特に厳しい指導でもない先生の話を聞き終わると、教室に戻るために楽器を片付け始めました。
その時、それまでは気づいていなかったのですがどうも物が見づらいことが分かりました。
半目を開けているような、視界の上部が暗くそれが少しづつ下部へ広がっているような感覚でした。
あー、それは黒内障の症状ですね。
目ではなく脳の血管が詰まったりすると起こるイメージがあります。
アマちゃん博識だね。
で、それは一過性のものだったんだよ。
教室に戻る頃には特に視界に関しては……。
……いや、今度は目の前にもやというか、やる気のないモザイクみたいなものが視界の中心にあってさ、黒板が見づらいのなんの。
さっきのと違って、今回は明るいのに異様にその部分だけ歪んでぼやけてるんだよ。
閃輝暗点の症状に似てますね。
急激な血流の収縮や拡張によって神経がビックリしちゃってる状態です。
え、なんでそんなことも知ってるの。
最近、芥川龍之介の『歯車』を読みましたから。
彼も度々起こる閃輝暗点に苦しんでいたそうですよ。
で、ホームルームが終わって、一時間目は体育だったんだ。
体育館でバドミントン。僕がその日いっちばん楽しみにしてた授業だね。
ただ、ホームルームが終わった時から目と目の間、それも耳の位置くらいの深さのとこになんか違和感があったんだよ。
ちょっと一分くらい寄り目をしてほしいんですけど、そこって寄り目を長くした時に疲れる部分に近いんですよね。
そこが寄り目をし続けたみたいな違和感があって、ただどうすることもできないし保健室に行くほどでもないからそのまま体育館に行ったんだ。
学校では、症状が出ないとなかなか理解されないことも多いですから、仕方ないですね。
で、体調的にはそこまで良くはなかったけど待ちに待ったバドミントンだからテンションをぶち上げて練習するわけよ。
ただ、ずっと見づらいからめちゃくちゃ負けてたけどね。
で、このあたりで吐き気がしてきたんだよね。
なんだろ。指を喉の奥に突っ込んだ時とは違う吐き気なんだよ。
あれって、喉のセンサーみたいなので感知→胃に吐く指令を脳が出すってイメージなんだけど、今回のは胃が独断で吐こうとしてるみたいな感じだったんだ。
しかも目の疲れも重くなって、吐き気もどんどん強くなってきたから先生に行って保健室へ。
吐き気が強いことを言って、ビニール袋が出てくるやいなやそこに吐きまくったよ。
閃輝暗点の症状にぴったりですね。
で、吐き終えた途端、さっき寄り目で疲れた部分が死ぬほど痛み出したんだ。
本当に。死ぬほど。
……ん?
吐き気と激しい頭痛、血管の収縮による黒内障って……
それくも膜下出血だったんじゃないですか?
怖いこと言わないでよ。
そんなわけないでしょ。現に病院に行った時も「あー、目が疲れちゃったのかな?」って言われただけだし。
眼精疲労にしては症状が激しくないですか?
で、その後はどうしたんです?
何時間吐いても吐き気が止まらない、頭痛はどんどん重くなっていったから早退して、親にそのまま病院に連れて行ってもらったよ。
で、さっきみたいな診察を受けて家に帰ったんだ。
あとは風邪の時と同じ感じ。
氷枕にあったかい布団でじっとしてたよ。
目はとてもじゃないけどあけてられなかったから、目を瞑ったまま頭を抱えて、頭痛が退くのを願ってた。
ちなみに、寝てても一切痛みは退くことはなかったよ。
ちょうどマユリの足削ぎ地蔵で攻撃されてる雨竜みたいになってた。
で、いつ頃痛みが引いたんですか?
5~6時間後かな。もう夕方だったような。
「ああ……生還した……」って感じで脱力してたよ。
次の日になる頃には痛みも全くなくなって嘘みたいに元気になったよ。
ただ、もうあの痛みが怖くてしばらくゲームできなかったな。
その後は今に至るまでその症状は出てないかな。
その部分に痛みを感じたのもそれが最初で最後だったかも。
まぁ、大事に至らないでなによりですね。
ちなみに、痛みを例えるとどんな感じだったんです?
うーん。
とにかく鋭い痛みだったよ。鈍痛とかじゃなくて。
なんだろうな……目の奥の大事な部分を洗濯ばさみで挟まれてる感じかな。
めちゃくちゃ分かりやすい、針とかに似た痛みだったかも。
なるほど、それ以来物忘れが激しくなってしまった、と。
そうだったらどれだけ救われたでしょうか。
以上。