そう思いました。
皆様いかがお過ごしでしょうか、角田です。
夢を追いかけるのはいいことだと思います、アマちゃんです。
でしょ?
さっそく新しい話を書いて、投稿しようと思ってるんだ。
? ちょっと待ってください。
これまで書いてたやつはどうするんですか? もう展開も佳境なんでしょう?
いやそうなんだけどさぁ……。
もう書いてる期間が二年になるし、そうなると物語の粗がどうしても目についちゃって、モチベーションは正直もうないんだよね……。
いつかまたこの屋敷で供養できたらって思って――
一つの作品も完結させられないのに新しい話なんて書けるわけないでしょ!!!
おおう。
どうしたのアマちゃん、おこなの?
小説家舐めてんじゃないですよ! どうせ新しいの書いたって、また同じことの繰り返しになるのが目に見えてます!! それで夢を追った気分になられるのは知人として非常に気持ちが悪いです!!!
まぁ……うん。そうだね。
あなたが今の作品に二年かけてるのも、「書き続けて二年」ってわけじゃないでしょう? 「物語の粗が見えてモチベーションが下がって書かなかった期間」が半分以上を占めているのではないですか?
痛いとこ突くね。
……そうだよ。
バックグラウンドを書けば書くほど「これっておかしくね?」ってポイントが増えて、それを見たくなくて書かなかったんだよ。
それを忘れた頃に話を進めて、また見えたら書くのをやめる。
そういう感じでこれまで書いてきたんだから。
そうやって目を背けても、文章として残っている限り矛盾や粗は消えませんよ?
あなたに今必要なのは「書き続けるパワー」ではなくて、「矛盾を修正する知性や勇気」じゃないんですか?
そりゃ、新しく始めたら「書き続けるパワー」はまた新たに得られるでしょう。
思い付きの高揚感、展開を前に進められる実感もあってガンガン進んでいくと思います。
でも、一作作り上げる道のりが1週間やそこらで終わるはずがありません。
きっとどこかで息切れを起こし、後ろを振り返ることもあるでしょう。
その時に感じた不協和音を聞かないふりして走るのはその後のあなたを苦しめる結果になりますし、その後のあなたが再び振り返った時により大きな不協和音を感じるのではないですか。
……おっしゃる通り。
今の僕がその状態です……。
自身の過去を否定するようで心苦しいとは思いますが、それはゴールした時に必ず報われる苦しみなんです。
今からでも遅くありません、自分が感じた不協和音を一つ一つ取り除き、貴方が愛したその作品を完成させるところから始めてはいかがでしょうか。
……でもさ。
結局取り除けないまま、その作品自体が不協和音になってる場合はどうすればいいの?
よく言うじゃん、「修正するより新しく作った方が早い場合がある」って。
それはそうですが、貴方が本当に欲しいのは小説家という肩書ではなく、お店に並ぶレベルの小説を書くことができる実力でしょう?
貴方前に行ってたじゃないですか。「僕の作品は猿が無限に描いたものの一つだ」って。
たとえがむしゃらに書いて当たって書籍化しました、となったところで次はどうするんですか? あなたはそこでようやくスタートラインに並んだだけなんですよ?
「50m走13秒台の人」が奇跡的にオリンピックに出場できても仕方ないですよ。そんな負け確定の状態でまた奇跡を信じて走るんですか?
ううむ……。
ごもっとも。
確かに、実力が伴わないままスタートできても仕方ない気がする。
幸い、デビューもしていない今ならどれだけ不出来でも許されます。
ダメなら審査で落とされるだけで、誰かから怒られるわけでもありません。
なので、今の内にあなたに決定的に足りていない「完成させる実力」をつける必要があると思いますよ。
……ありがとう、アマちゃん。
そうだよね。
じゃあ、次回作で構想を練った「アマちゃん珍道中!! メリケンサックでスラム巡り!!」は今の作品を仕上げてから書くことにするよ。
…………。
やっぱり、まずは一般的な感性を取り戻すところから始めましょうか。
道は長い。
以上。