高田大介先生の「まほり」を読んで

どうも、最近異常にクルミを食べています、角田です。

 

『図書館の魔女』に出会って早三年。シリーズの新作が出るのを定期的に確認する日々にも慣れましたが、シリーズには関係ない新作が昨年11月に刊行されました。

 

それがこちら、高田大介先生の『まほり』です!

まほり (角川書店単行本)

まほり (角川書店単行本)

 

 これ、自粛中を利用して読んでみました。

なんだかいろいろと懐かしくなりましたよ。

 

内容としては、友人に聞いた奇妙な模様の話、また母の素性を探るためにとある神社を調査していた社会学を先行している学生が、ヒロインと共に山を駆け回って様々な証拠を集める過程で周辺の文化に不穏な空気を感じてさらに調査を進める……といったとこでしょうか。

基本的に山の中にいて、祠とかを巡るんですが……食人や子間引きといった目をそむけたくなるが、しかし実際に存在した歴史を巡って古文書とかをしっかり読んでいくのも新鮮ですね。

 

流石『図書館の魔女』を書きあげた高田先生、情景描写が非常に写実的であり、建物の構造や名称に非常に明るいことが伺われるその語彙力、圧倒的でした。

ただ、『図書館の魔女』シリーズよりは多少軽めで、現代日本が舞台ということもあり非常になじみ深い景色が多かったように感じます。

 

また、物語の進め方が独特であり、小説というより論文のような緻密さを持ち合わせています。

恐らく他の小説ではさらっと回収する部分も、丁寧に、これでもかというほどの説得力を持って説明してくださいます。そういった部分に、高田先生の『学者』を感じます。

 

というか本当に、これ半分論文なんじゃないかってくらいしっかりと論を立てられています。

 

国会図書館データベース』って言葉を小説の中で見るとは思ってませんでしたし、そもそも漢文の翻刻がめちゃくちゃ載ってます。これ、論文です。

これ読んでるとき、本当に学生時代を思い出しました。

だって、挿絵として『後見草』の本文の写真がついてるんですよ?

 

僕は古典文学を専攻してましたからね。少ない知識でも刺激されてしまうんです。

 

 

それでいて、主人公の恋愛模様もしっかりと描くのが憎らしい。

とってつけたようなものではなく、ちゃんと二人の関係性が気になるんですよ。

だからもう読んでる側の頭の中は大変なことになってますよ。

 

主人公の母の素性は? 町中にある弦巻模様の意味は? ヒロインはなんでこんなに可愛い? 古文書難しいよ……。この少年の目的は? 「まほり」とは? 主人公の大学生活リアルだな! なぜお父さんは母について語らない? おいおい、漢文の白文じゃねぇか。読めんわ。 お前らはよ付き合え。古賀さんめちゃ有能やんけ。 え、この人たちこわ……。少年めちゃくちゃ無理するじゃん。都市伝説の話おもしろ。え、お母さんこわ……リアル。軽トラの人こわ……。祠こわ……。

 

って感じになります。マルチタスクが苦手な人には向いていないかもしれません。

それと、漢文の白文とか古文書は主人公たちが解説してくれるので安心してください。

 

本書、ジャンルは民俗学ミステリだとか。

社会学、歴史、古典文学に興味がある人、これから大学で学ぶって人は読んでみるといいかもしれません。

そういった学問に入った際に避けては通れない道が博物館の展示の如く一望できます。

 

あと、既に学んでいる人にもおすすめです。

あなた方の学んできたことがこの小説を読みやすくするということに一役買います。

 

僕は言語学、古典文学を学んできたのですが、まぁー、日常生活で直接使えるところがない。

まぁ、こういった知識の量が人生の豊かさにつながると考えているので、無駄ではないと思うんですがね。やっぱり剣を持ったからには何かを斬りたくなるのが人の性というもの、斬るものがなければストレスが溜まります。

 

そういった点で、この本、また『図書館の魔女』シリーズは最高なんですね。

学んだことが物語の推理で生かされ、さらに未知の知識にも出会える、別分野の楽しみも知れる、食べ物が美味しそう、といいことづくめです。

 

 

あとこれは個人的な話なのですが、この本の民俗学、神社縁起、神仏習合竜神信仰、蛇に関しては僕の学んできたジャンルや項目と丸被りしてるので、内容を知ってからテンション爆上がりでした。

 

 

 

皆さんも、よろしければ手に取って読んでみてください。

 

 

読めるうちにね。

 

以上。