『ストロベリアル・デリバリー ぼくとお荷物少女の配達記』はいいぞ

この小説は3年前、友人と本屋に行った際に衝動買いしたものです。

本の紹介ということで、今回は冒頭にAmazonのリンクを貼っておきます。

 

 せっかくなので最初は表紙について言及します。

この表紙は僕が衝動買いした理由の一つです。

「ストロベリアル・デリバリー」のタイトルに合った、ピンクを基調として可愛らしいデザイン。加えて、おとぎ話のような儚さと非日常へ導いてくれそうな不思議な雰囲気が僕のツボにはまりました。

この表紙と挿絵を手掛けている片山若子さん。どこかで見たことがあると思ったら僕の好きな星新一さんの『気まぐれロボット』の表紙を描いている人でした。

すごすぎる。

 

 

で、肝心の内容としては短編五話のオムニバス形式で、「配達人のイットとイソラが荷物を届ける際、依頼人の頼み事や事件に巻き込まれる」という感じですかね。

その依頼人……というか、届け先の人が皆普通じゃない。どう普通じゃないのかはネタバレになってしまうので言えませんが……非常に凝った設定の人たちであるとだけ言っておきます。

 

そして何より全体を通して雰囲気がいい。

先の表紙でも言ったような、おとぎ話に近い非日常感の中を心地よく漂える雰囲気が溜まらないんです。

イットのセリフである「そこに人が住む限り『何事もない』なんてないんだよ」を体現したような、非常に濃く深い味わいの話が5つ(閑話を入れているので正確には4つ)並んでいる様はさながらケーキのショーウィンドウを思わせます。

また、この雰囲気は青年イットの少し気取ったセリフや少女イソラのちょっと背伸びした物言いが映えるんですね。この二人の掛け合いだけでも楽しく見ていられます。

 

あと、この二人は互いを大切に想っているというのが非常に良い。いやまぁ、これはあまり直接的には描写されていないんですが。

イットはイソラを友達のように近い距離感で接したり、イソラはイットに恋心を抱いていて一歩踏み込んだ関係になろうとアプローチしていたり……と、所謂「尊い」という言葉で表すのが適切ですかね。ケンカするところも微笑ましい、そんな二人の関係を眺めているのがすごく楽しい。

個人的に、閑話の水を争っているところは爆笑しました。

 

どの話も甲乙つけがたいのですが、強いて言うなら第四話「不束者ですが、お召し上がりください」が好きです。僕は蛇神と生贄を卒論にしていたのでこのテーマは割とテンション上がりました。そういったダークなテーマも可愛らしくしてしまうのがこの小説の魅力ですね。

 

この小説の発売が2015年10月。

「ストロベリアル・デリバリー 続編」と検索するのもかなり慣れてきましたが、未だ続編は出ていません。

叶うならば、もっとこの二人の日常が見たい……!

 

という、願いが少しでも届けばいいな、と思ってこの記事を書きました。

みんなも読んでみてね。

 

 

以上。