地獄の一丁目:ハイパー☆もやしパーティー 後編

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前回のあらすじ

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「もやしを持ち寄ってワイワイ食べよう」というイベントは、バカの持ってきた27袋のもやしによって地獄へと変わった。

しかし、始めに3袋食べて見たところ「あれ……いけるやん」といった感想を漏らす。

果たして、お馬鹿な高校生の僕たちは56袋のもやしを食べきれるのか。

 

 

不穏

3袋食べた後に今度は4袋投下し、それもペロリと食べてしまいました。

もはや不安なんて欠片もありません。

 

しかし、僕たちは気づきます。

 

 

「あれ? 汁多くね?」

 

 

そう、もやしから出た水分は容赦なく溜まり、ホットプレートに調味料を加えていたこともあって、茶色いプールと化していました。

 

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これが第何波の画像か忘れてしまいましたが、こういった茶色いプールができます。

 

 

問題は、加えた調味料全ての味がするスープだということ。

味が濃すぎて美味とはいえません。

 

 

さて、どうするか。僕たちは考えました。

重いホットプレートを運んでこのスープを捨てるわけにもいかない……。

 

 

 

ここで、友人(以下「狂人」)がおもむろにとり出したのは……

 

 

「麩」です。

 

お味噌汁なんかに入っているあのぶよぶよしたやつ。その乾燥したものを狂人はとり出しました。こいつはなにを思って麩を持ってきたのでしょうか。

 

とにかく、麩の登場によってこのスープ問題は解決しました。

 

ホットプレートに麩を敷き詰め、スープを吸った麩を食べてしまえばいいのです。

 

問題は味……

麩を持ってきた狂人が一つ、口に運びます。

 

 

……

 

 

………

 

 

…………

 

 

「うん、意外といける」

 

 

それを聞き、皆も一口。

 

 

「まぁ……うん。意外といけるじゃん」

 

スープの味が濃いものの、麩の味が控えめだったのもあって皆(というか僕も)「意外とうまい」という評価で、この問題を乗り越えました。

 

 

 

 

そして予期せぬ麩の登場によって「キッチンペーパーでスープ吸えばよくない?」という簡単なことにも気づけないまま、続けてもやしを投入していくことになりました……。

 

 

 

 

 

焼きそばだ!焼きそば!

 

第何波過ぎたのだろうか。

 

後ろを見ても、大量に積まれたもやしがある。

目算でも40袋くらいあるその山に、ついに坊主の心が折れた。

 

 

 

 

「……一回焼きそばしない?」

 

 

 

その言葉に意義を唱える者は誰もいませんでした。

 

一旦ホットプレート上のもやしを食べきり、例の如く麩を敷いて水分を取った後に焼きそばを作り始めました。

 

 

何玉入れたのかは覚えてませんが、さすがに2、3玉だったと思います。

もうすでにもやしに辟易していた僕たちは、もやし以外の食材に目を輝かせました。

キャベツやベーコンをこれほどまでありがたがる機会は初めてでした。

 

そして追加で投入されるもやし。

 

バカ「おい、もやしはいれんなよ……」

坊主「うるさい。少しでも減らすんだよ」

と、小競り合いもありつつできたスープもやし焼きそば

 

 

 

そう、スープもやし焼きそばです。

 

 

 

焼きそばを作る前、麩で吸収するにはスープの量が多すぎたのです。

しかし、もう焼きそばを食べたくてしょうがない僕たちはスープを40%程残したホットプレートで焼きそばを作っていたのです。

 

このスープがまたひどい味。特にポン酢の風味は破壊力満点でした。

 

……という、もやし国に生まれし忌み子「スープもやし焼きそば」によって、食感の違うもやしを食べている気分に苦しめられました。体は焼きそばなのに、心は完全にもやしに乗っ取られている怪物でした。

 

 

 

 

裏切り

 

総計30~40袋を食べたときでしょうか。

 

「もやしと一緒に別の物も炒める」という手法で味変を狙っていた僕たちの間で裏切り者が摘発されます。

 

そいつは、机の下に余ったベーコンの袋を隠し持ち、もやしを食べるふりをして、ベーコンを口に運んでいやがったのです。

 

なんて奴なのでしょうか。今この現状は彼のせいではないにしても、既に「全てのもやしを食べきる」という一体感をもった仲間をこんな卑しい方法で裏切るなんて。

 

ただ、僕は別に腹を立てることはありませんでした。

 

 

 

 

 

 

だって、裏切り者とはだったのですから。

 

………

 

 

 

こんな地獄に付き合ってられっか!

 

 

と、リッチの家を飛び出すわけにもいかず……。

 

僕はベーコンを取り上げられ、皿に乗っている倍のもやしを食べることで償うことになりました……。

 

 

 

 

完食

17時。

5時間もの死闘を経て、僕たちは遂に56袋の悪魔を食べきることができました。

 

達成感より満腹感の多いものでしたが、皆の気分は多少晴れやかなものだったのではないでしょうか。

 

 

途中、「テンションが上がってただけで、実はこのスープを吸った麩が激マズだと気づき、皆で押し付け合った」ことや、「こっそり皿のもやしをホットプレートに戻す事件」等がありましたが、食べ終えてしまえばそれも良い思い出となったのです。

 

 

 

後日談

 

その日を終え、次学校に行ったとき、僕は狂人に尋ねました。

 

 

「ねぇ、体調崩さなかった?」

 

 

「ああ、めちゃくちゃ下痢した

 

 

「だよね……僕も……」

 

恐らく、他の仲間も苦しんだことでしょう……。

 

 

 

 

 

 

良い子は美味しく適量を食べましょう。